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2004/03/06

習熟度別授業について(1)

「......それが問題だ。」(takayanさん)で、「『習熟度別授業』は機会平等への大事な道筋」という教育の記事を読み、習熟度別授業について考えました。
長文になるので、エントリー(記事の投稿)を分けて掲載させて頂きます。(1)〜(3)ぐらいで完結予定です。

「習熟度別授業について(1)」の Index
 はじめに
 1. 習熟度別授業の導入理由・経過
 2. 習熟度別授業の成果


はじめに
トラックバック元のtakayanさんの記事は、
1. 1月26日に埼玉県で開かれた日教組教研集会で、
「自分も高校時代に能力別授業を受けた。『あほクラス』と呼ばれ卑屈な思いをした」「子ども同士の学び合いや学級集団としての成長を分断している」と「習熟度別授業」に批判が集中した。
2. 東大生の家庭の平均年収は、1,016万円。

という二つのことから、
「お金持ちでないとよい教育が受けられない」現状において、
「習熟度別授業」を間違った平等主義で解釈するのでなく、正しく運用して、もともと学力が高いのに親がお金をかけられない子供に、公教育でこそ教育の機会均等はかるべきだ。
というご趣旨と受け取りました。(※引用文ではありません。正確には、元記事をご覧になって下さい。)

 takayanさんのご意見に、同感するところは多いのですが、私は、習熟度別授業が、現実的には、そのような意図で導入されたのではないと感じています。

1. 習熟度別授業の導入理由・経過
 習熟度別授業の実態を把握するために、習熟度別授業の導入が、どういうニーズにより出てきたものなのか、考えてみます。(高校での導入例が多いでしょうが、校種、学年等、特に限定しないで考えてみます。)

 それでは、ある教師が、通常のクラスで通常の授業を行うことを、想像してみて下さい。個々の生徒の学力、学習進度は様々。中には、寝ている生徒、授業とは関係のないことをしている生徒など、授業に身の入らない生徒もいます。場合によっては、授業妨害(あからさまな私語をする、他の生徒をつつく、教室内を立ち歩くなど)をする生徒も想定されます。そこで、教師は、授業をするためにどうするでしょう。
 寝ている生徒を起こす、他のことをしている生徒に注意する、理解の遅れた生徒に個別指導をする、授業妨害をする生徒に指導をする。あるいは、きちんと授業に参加している生徒の学習を先に進めるために、やむなく、問題のある生徒を無視する形で授業を進めてしまうかもしれません。

 授業がチャイムによって終了し、一日の仕事が終わった後で、その教師はどう思うのでしょう。
問題を抱えた生徒の問題を解決することは、そう簡単ではなく、もちろん1日で解決できるようなことではない。明日も、明後日もこの状態に取り組まなければならない。実は、そういう生徒とのコミュニケーションを図ることは、いくらか気が重い。少なくとも通常の業務で十分に忙しいのに、授業時間外にそうした問題に取り組む(生徒と話をしたり、他の教師と連携するために会議や話し合いを持ったり、保護者とともに取り組むために家庭訪問をしたりする)のは、負担が大きい。かと言って、多くの生徒は、授業が順調に進むことを望んでいるし、授業はカリキュラムの通りに進めなくてはならない。
 その教師が、「・・・せめて、問題のある生徒と、そうでない生徒とクラスをわけられたらなあ・・・。」と思う可能性は十分です。

 きちんと授業に参加している生徒、真剣に進路を考えている生徒は、この状態をどう思っているでしょう。「今日も、あの子に時間をとられて、授業があまり進まなかった・・・。」

 そうした授業の様子を聞いた保護者は、校長を始めとする学校に対して、生徒の進学率を上げることを期待し、要望するでしょう。
 一方、問題を抱えた生徒の保護者は、日々の生活のためにこの問題に取り組む余裕がなかったり、ノータッチになっていたりすることが多いようです。

 少し具体的に想像して頂けると、習熟度別授業がどのようなニーズから、従って、何のために導入されるのかおわかり頂けると思います。
 いわゆる進学校でも、1時間に練習問題が8問しか進まないが、10問進めるにはどうしたらよいかと考えると、同様な結論にたどり着くことになります。

 つまり、習熟度別授業は、現実的な需要に即効性を期待して導入されているというのが、実態のように思います。

2. 習熟度別授業の成果
 では、習熟度別授業の成果は、どうなのでしょうか。
 「いわゆる成績の良いクラス」では、「効率良く授業を進めることが可能となり、成績の良い生徒の成績をますます上げていくことができる」のでしょうか。単純に言えば、教師が、生徒の高い志に応じられる高い学習指導力を持っていれば、そうなるはずです。(生徒にも個人差がありますから、指導された以上に伸びる子も、指導されても十分には伸びない子もいますが、概論として。)学習指導力の高い教師は、数学だけでなく、英語も、理科も・・・と求められます。

 では、「いわゆる成績の良くないクラス」では、どうでしょう。「基礎固めから時間をとってやり直すよう指導できるので、結局は、そのクラスの生徒の成績も上がることが期待できる」のでしょうか。指導者には、一度つまずいている生徒に、基礎学力を身につけさせるための、真に高い学習指導力が求められます。家庭環境等にも配慮して、問題を抱えた生徒とコミュニケーションを図ることができる高い生徒指導力も求められます。これらは、とても難しいことです。
 では、再び、あるクラスの授業を想像してみて下さい。そのクラスは、いわゆる最も成績のよくないクラスです。生徒は、学力がついていない、勉強する動機づけもできておらず、やる気がない。授業中に私語をしても、教室を歩き回っても、クラスには、「迷惑をかけないで。授業が進まないじゃない。」という同級生の存在もない。
通常のクラスでの授業であっても、そうした生徒が数人いれば、授業の進行に不都合をきたしてきたのに、そうした生徒ばかり、多人数が集められている。満足のいく授業が進められるでしょうか。
 おそらく、一斉授業は困難です。生徒、一人ひとりの学力に応じ、一人ひとりが抱えている問題に対処するために、プリントを使ったりして個人別の課題と指導が必要となるはずです。他の先生は、協力してくれるでしょうか。学校全体としての取り組み、教職員、教頭、校長のチームワークが必要です。

つまり、習熟度別授業の成果は、個々の学校によって異なる条件に、大きく左右されると思われます。非常におおまかにしか言えませんが、学習面では、概して、「いわゆる成績の良いクラス」は、いくらかでも成果が上がる、うまくいくという場合が多く、「いわゆる成績の良くないクラス」は、運営がより困難になる場合が多いと、予測されます。もちろん、学校により生徒の学力層に違いがありますから、「いわゆる成績の良くないクラス」も、大変効果が上がることもあります。

習熟度別授業(2)へ、続きます。

*追記)04.07.11  記事「習熟度別授業」INDEX
習熟度別授業(1)
 はじめに
 1. 習熟度別授業の導入理由・経過
 2. 習熟度別授業の成果

習熟度別授業(2)
 3. 効果的な習熟度別授業を成り立たせる条件
 4.教育研修会の教師の発言からわかること
  4-1. 教育の負担・責任

習熟度別授業(3)
  4-2. コミュニケーション能力
 5. 教育に求めるもの、本当に教育すべきこと


*追記)05.05.12  各記事(エントリー)へのリンクが移転前のブログ(JUGEM)内のものだったのを、新ブログ(ココログ)内のものに改めました。

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» 再考――「習熟度別授業」は誰のためのものか [……それが問題だ。]
大阪市、全小中学校で習熟度別授業 新年度から順次拡大 (朝日新聞) ごきげん/習熟度別授業について(1)さんから、前の記事(「『習熟度別授業』は機会平等への大事な道筋」)にトラックバックをいただきました。教える側からのニーズについてと、実施した場合の... [続きを読む]

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